総合手引 | セクション 2 | English | Deutsch | オプション |
#include <signal.h>
struct sigaction { union { void (*__sa_handler)(int); void (*__sa_sigaction)(int, struct __siginfo *, void *); } __sigaction_u; /* シグナルハンドラ */ int sa_flags; /* 後述のシグナルオプション参照 */ sigset_t sa_mask; /* 適用するシグナルマスク */ };#define sa_handler __sigaction_u.__sa_handler #define sa_sigaction __sigaction_u.__sa_sigaction
通常の場合、シグナルルーチンは、呼び出しの原因となったシグナルが ブロックされた 状態で動作しますが、その他のシグナルが発生する可能性は あります。 グローバルの シグナルマスク には、プロセスへの配信が現在 ブロックされているシグナルの集合が定義されています。 プロセスのシグナルマスクは、親のシグナルマスクで初期化されます (通常は空)。 sigprocmask(2) が呼び出された場合、またはシグナルがプロセスに配信された場合に、 シグナルマスクは変更されます。
あるシグナルの生起条件がプロセスで発生すると、そのシグナルが、 プロセスで保留中のシグナルの集合に追加されます。 そのシグナルがプロセスで現在 ブロック されていない場合は、プロセスに配信されます。 シグナルは、プロセスがオペレーティングシステムに入っている間に (システム呼び出し、ページエラーやトラップ、クロック割込み中などに) 配信されます。 複数のシグナルの配信準備が同時に整った場合は、トラップで生じたシグナルが 先に配信されます。 その他のシグナルは、それぞれが前のシグナルのハンドラに対し、 最初の命令の前に割り込んだ状態で同時に処理されます。 保留になっているシグナルの集合は、 sigpending(2) システムコールで返されます。 捕捉されたシグナルが配信されると、プロセスの現在の 状態が保存され、新しいシグナルマスクが以下で説明するように算出されて、 シグナルハンドラが呼び出されます。 ハンドラの呼び出しは、 シグナル処理ルーチンが正常に戻った場合に、プロセスがシグナル配信前の コンテキストで実行を再開するように設定されます。 プロセスが別のコンテキストでの再開を望む場合は、 前のコンテキストそのものを自分自身で回復するように設定する必要があります。
シグナルがプロセスに配信されると、プロセスの シグナルハンドラの実行が続く間 (または sigprocmask(2) システムコールが呼び出されるまで)、新しいシグナルマスクが設置されます。 このマスクは、現在のシグナルマスク集合、配信されるシグナル、 呼び出されるハンドラに関連したシグナルマスクの和集合を取って形成されます。
sigaction() システムコールは、 sig で指定したシグナルのアクションを割り当てます。 act が 0 でない場合は、アクション ( SIG_DFL, SIG_IGN かハンドラルーチン)、および指定されたシグナルの配信時に 使用するマスクが指定されます。 oact が 0 でない場合は、そのシグナルのそれまでの処理情報がユーザに返されます。
シグナルハンドラが設置されると、通常の場合は別の sigaction() システムコールを呼び出すか execve(2) を実行するまで、そのシグナルハンドラは設置されたままです。 sa_handler を SIG_DFL に設定することで、 シグナルごとに固有なデフォルトアクションにリセットすることができます。 デフォルトとは、プロセスの終了 (コアダンプが取られることもあります)、 アクションなし、プロセスの停止、プロセスの継続です。 それぞれのシグナルのデフォルトアクションについては、 下記のシグナルリストを参照してください。 sa_handler が SIG_DFL である場合、シグナルのデフォルトアクションはシグナルの破棄になります。 また、シグナルが保留になっている場合でも、シグナルがマスクされていても 保留中のシグナルは破棄されます。 sa_handler を SIG_IGN に設定すると、現在のシグナル実体と保留中のシグナル実体は無視されて 破棄されます。
オプションは、 sa_flags を設定することで指定できます。 それぞれのビットの意味は以下のとおりです:
SA_NOCLDSTOP | SIGCHLD シグナルの受信関数を設置する場合にこのビットを設定すると、 子プロセスが停止したときではなく、子プロセスが終了するときにのみ、 SIGCHLD シグナルが生成されます。 |
SA_NOCLDWAIT | SIGCHLD シグナルで sigaction() を呼び出す場合にこのビットを設定すると、システムは、呼び出し側プロセスの 子プロセスが終了したときにゾンビプロセスを作成しなくなります。 そのあと、呼び出し側プロセスが wait(2) (かそれに相当する関数) を実行すると、呼び出し側プロセスのすべて の子プロセスが終了するまでブロックし、次に errno を ECHILD に設定して -1 を返します。 SIGCHLD のための sa_handler に SIG_IGN を設定することによって、 ゾンビの作成を避ける同じ効果を得ることも可能です。 |
SA_ONSTACK | このビットを設定すると、システムは、 sigaltstack(2) で指定された シグナルスタック の上で、プロセスにシグナルを配信します。 |
SA_NODEFER | このビットを設定すると、配信済みシグナルのさらなる発生が、 ハンドラの実行中にマスクされなくなります。 |
SA_RESETHAND | このビットを設定すると、シグナルが配信された瞬間に、ハンドラが SIG_DFL にリセットされます。 |
SA_RESTART | 下の段落を参照してください。 |
SA_SIGINFO | このビットが設定されている場合、ハンドラ関数は、 struct sigaction 構造体の sa_sigaction メンバが指すものと見なします。 ハンドラ関数は、先に示したプロトタイプもしくは後で示す 使用例 に一致しなくてはなりません。 このビットは、 SIG_DFL もしくは SIG_IGN を割り当てる時には設定してはいけません。 |
次に挙げるシステムコールの実行中にシグナルが捕捉されると、 そのシステムコールの呼び出しは、 エラー EINTR で強制終了されるか、要求より短いデータ転送で戻るか、または再開されます。 保留中のシステムコールの再開は、 sa_flags で SA_RESTART ビットを設定することで要求できます。 影響を受けるシステムコールは、 通信チャネルか遅いデバイス (端末など、通常ファイルではないもの) に対する open(2), read(2), write(2), sendto(2), recvfrom(2), sendmsg(2), recvmsg(2) と wait(2), ioctl(2) です。 しかし、すでに実行されているシステムコールは再開されず、 部分的な処理成功の結果 (短い読取りカウントなど) を返します。
fork(2) か vfork(2) の後では、すべてのシグナル、シグナルマスク、シグナルスタック、 再開フラグ、割込みフラグが子プロセスに継承されます。
execve(2) システムコールは、捕捉されていたすべてのシグナルのデフォルトアクションを 元に戻し、すべてのシグナルをユーザスタックで受信されるようにリセットします。 無視されたシグナルは無視されたままです。 シグナルマスクは同じ状態のままです。 保留中のシステムコールを再開する設定のシグナルは、その再開の設定のままです。
以下はすべてのシグナルのリストです。 名称は、インクルードファイル <signal.h> にあるものと同じです:
名称 Ta デフォルトアクション | 説明 | |
SIGHUP | プロセスの終了 | 端末ラインのハングアップ |
SIGINT | プロセスの終了 | プログラムの割込み |
SIGQUIT | コアイメージの作成 | プログラムの中断終了 |
SIGILL | コアイメージの作成 | 不正な命令 |
SIGTRAP | コアイメージの作成 | トラップのトレース |
SIGABRT | コアイメージの作成 | abort(3)の呼び出し (以前の SIGIOT) |
SIGEMT | コアイメージの作成 | 命令実行のエミュレート |
SIGFPE | コアイメージの作成 | 浮動小数例外 |
SIGKILL | プロセスの終了 | プログラムの強制終了 |
SIGBUS | コアイメージの作成 | バスエラー |
SIGSEGV | コアイメージの作成 | セグメンテーション違反 |
SIGSYS | コアイメージの作成 | 存在しないシステムコールの呼び出し |
SIGPIPE | プロセスの終了 | 読取り側がないパイプへの書込み |
SIGALRM | プロセスの終了 | リアルタイムタイマの満了 |
SIGTERM | プロセスの終了 | ソフトウェア終了シグナル |
SIGURG | シグナルの破棄 | 緊急状況がソケットに発生 |
SIGSTOP | プロセスの停止 | 停止 (捕捉も無視もできません) |
SIGTSTP | プロセスの停止 | キーボードから生成された停止シグナル |
SIGCONT | シグナルの破棄 | 停止後の継続 |
SIGCHLD | シグナルの破棄 | 子プロセスの状態変化 |
SIGTTIN | プロセスの停止 | バックグラウンドプロセスが制御端末から読み取ろうとした |
SIGTTOU | プロセスの停止 | バックグラウンドプロセスが制御端末に書き込もうとした |
SIGIO | シグナルの破棄 | 記述子への I/O可能 ((fcntl) 2 参照) |
SIGXCPU | プロセスの終了 | cpu 制限時間の超過((setrlimit) 2 参照) |
SIGXFSZ | プロセスの終了 | ファイルサイズ制限の超過((setrlimit) 2 参照) |
SIGVTALRM | プロセスの終了 | 仮想時間アラーム((setitimer) 2 参照) |
SIGPROF | プロセスの終了 | プロファイリングタイマアラーム((setitimer) 2 参照) |
SIGWINCH | シグナルの破棄 | ウィンドウサイズの変化 |
SIGINFO | シグナルの破棄 | キーボードからのステータス要求 |
SIGUSR1 | プロセスの終了 | ユーザ定義シグナル 1 |
SIGUSR2 | プロセスの終了 | ユーザ定義シグナル 2 |
以下の関数は、再入的であるかシグナルで割り込まれることがないかのどちらかで、 非同期シグナルでも安全です。 このため、アプリケーションは、シグナル受信関数から制限なく呼び出せます:
ベースインタフェース
_exit(), access(), alarm(), cfgetispeed(), cfgetospeed(), cfsetispeed(), cfsetospeed(), chdir(), chmod(), chown(), close(), creat(), dup(), dup2(), execle(), execve(), fcntl(), fork(), fpathconf(), fstat(), fsync(), getegid(), geteuid(), getgid(), getgroups(), getpgrp(), getpid(), getppid(), getuid(), kill(), link(), lseek(), mkdir(), mkfifo(), open(), pathconf(), pause(), pipe(), raise(), read(), rename(), rmdir(), setgid(), setpgid(), setsid(), setuid(), sigaction(), sigaddset(), sigdelset(), sigemptyset(), sigfillset(), sigismember(), signal(), sigpending(), sigprocmask(), sigsuspend(), sleep(), stat(), sysconf(), tcdrain(), tcflow(), tcflush(), tcgetattr(), tcgetpgrp(), tcsendbreak(), tcsetattr(), tcsetpgrp(), time(), times(), umask(), uname(), unlink(), utime(), wait(), waitpid(), write()
リアルタイムインタフェース
aio_error(), clock_gettime(), sigpause(), timer_getoverrun(), aio_return(), fdatasync(), sigqueue(), timer_gettime(), aio_suspend(), sem_post(), sigset(), timer_settime()
ANSI C インタフェース
strcpy(), strcat(), strncpy(), strncat() そして多分他にもいくつか
拡張インタフェース
strlcpy(), strlcat()
上のリストに記載されていないすべての関数は、シグナルに関して安全でない と考えられます。 つまり、そのような関数がシグナルハンドラから呼び出されるときの動作は、 未定義です。 しかし一般的に、シグナルハンドラはフラグを設定する以上のことは あまりするべきではなく、それ以外のアクションは安全ではありません。
また、大域変数 errno のコピーを作成し、シグナルハンドラから戻る前にその値を戻すように するのはよいことです。 こうすることによって、シグナルハンドラの内部から呼ばれた関数によって errno が設定されてしまうという副作用を防ぐことができます。
ANSI C: | void handler(int); |
伝統的な BSD スタイル: | void handler(int, int code, struct sigcontext *scp); |
POSIX の SA_SIGINFO: | void handler(int, siginfo_t *info, ucontext_t *uap); |
sa_flags フラグ中で SA_SIGINFO ビットが設定されている場合、ハンドラ関数は SA_SIGINFO プロトタイプに一致しなくてはなりません。 その場合、 struct sigaction 構造体の sa_sigaction メンバがハンドラ関数を指していなければなりません。 この方法で SIG_DFL あるいは SIG_IGN を割り当ててはいけないことに注意してください。
SA_SIGINFO フラグが設定されていない場合、ハンドラ関数は ANSI C もしくは伝統的な BSD プロトタイプのどちらかに一致しなくてはならず、 struct sigaction 構造体の sa_handler メンバがハンドラ関数を指していなければなりません。 実際には、 FreeBSD は常に後者である BSD プロトタイプの 3 つの引数を送りますし、 ANSI C プロトタイプはそのサブセットになっていますので、どちらでも動作します。 FreeBSD インクルードファイルの sa_handler メンバ宣言は、 ( POSIX の要求に従い) ANSI C のものです。 そのため、 BSD スタイルの関数のポインタの場合、警告メッセージを無くして コンパイルするにはキャストする必要があります。 伝統的な BSD スタイルは移植性がなく、その機能性も SA_SIGINFO ハンドラの完全な部分集合になっていますので、 BSD スタイルを使うことは推奨されていません。
sig 引数はシグナル番号で、 <signal.h> の SIG... 値のうちの 1 つです。
BSD スタイルのハンドラの code 引数および SA_SIGINFO ハンドラへの info 引数の si_code メンバには、シグナルの発生理由を説明した数値コードが含まれています。 通常、この数値コードは <sys/signal.h> にある SI_... 値の 1 つであるか、もしくはシグナルに特化したコード、すなわち SIGFPE に対する FPE_... 値です。
BSD スタイルのハンドラの scp 引数は struct sigcontext 構造体のインスタンスを指しています。
POSIX SA_SIGINFO ハンドラの uap 引数は、ucontext_t のインスタンスを指しています。
[EFAULT] | |
act か oact は、プロセスに割り当てられたアドレス空間の範囲外を指しています。 | |
[EINVAL] | |
sig 引数が、正しいシグナル番号になっていません。 | |
[EINVAL] | |
SIGKILL か SIGSTOP のハンドラを無視するか提供しようとしました。 | |
SIGACTION (2) | June 7, 2004 |
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